世間は言う。「そんな裏切り女、さっさと別れろ」と。
ネットを開けば、不倫相手への復讐や、いかに有利に離婚するかのノウハウばかりが目につく。
でも、私の心は違っていた。
悔しくて、夜も眠れなくて、フラッシュバックに怯える毎日なのに、どうしても妻を嫌いになれない。そんな自分を「未練がましい」「男らしくない」と責め、さらに深く傷ついていた。
そんな時、YouTube「しあわせ家族研究所」のザビエルさんの動画に出会った 。 画面の向こうから投げかけられる問いに、私は必死にノートを走らせた。
幸せな関係を築くための「3つの実践」
ザビエルさんの動画で何を学んだのか?
- 心からの感謝:相手の行動の背景にある苦労や愛情にまで想像を巡らせ、お互いの存在に心から感謝すること。
- 心からの謝罪:自分が悪いからではなく、相手の立場に立ち、相手を悲しませてしまったことに対して心から謝ること。
- 価値観を手放す:完璧な家事や仕事など、自分や家族を苦しめる価値観を手放し、夫婦で話し合って家族の笑顔など本当に大切なことを優先すること。
これらを実践することで、お互いにとって居心地のよい関係を築くことができます。とされています。
↓参考動画
「浮気した妻と、なぜまだ一緒にいたいのか?」
離婚すればこの地獄から楽になれるかもしれない。なのに、なぜ私はここに踏みとどまろうとしているのか。その理由を手繰り寄せたとき、溢れ出してきたのは、妻と出会った20年前の記憶だった 。
初めて出会った頃の彼女は、眩しいくらいに綺麗で、可愛い人だった。「自分なんかじゃ、近づけるはずもない」そう思っていたのに、同じ部署に配属になり、不器用ながらも一生懸命に仕事に向き合う彼女の姿を近くで見ることになった 。 何より、彼女が患者さんに向ける笑顔は最高で、職場の笑顔コンテストに選ばれるほどのその姿に、私は完全に恋に落ちた。それから今まで、ずっと私の「自慢の奥様」だった 。
関係が悪くなってケンカを繰り返す日々の中でも、振り返れば、彼女はたくさんの愛情を私に注ぎ続けてくれていた 。
- 買い物に行くと、急に手を繋いできたり、腕を組んできたりしたこと 。
- 私の体調が悪いと、いつも気にかけてくれたこと 。
- ほとんど毎日、欠かさずお弁当を作ってくれたこと 。
- 鈍感な私が自分勝手に抱きしめた時でさえ、体調が悪くても優しく抱きしめ返してくれていたこと── 。
私は、彼女が20年間、日々の生活の中で静かに注ぎ続けてくれていた無数の愛情を、当たり前だと思って見落としていたのだ 。
妻のこと
なぜ、そんな妻が不倫という選択をしてしまったのか。
私の妻は、3人兄弟の末っ子として育った。彼女が1歳のきに義母さんが美容院を開業したため、仕事が忙しく、食事こそ作ってもらえたものの、十分な子育ての時間をかけてもらえなかったという 。 週末になれば、上のきょうだいたちの邪魔にならないよう、バスで30分も離れた祖父母の家に「足手まとい」として預けられる日々。義母さんは後年、「落ち着きのない子で気になりながらも、あまり関わってあげられなかった」と漏らしていた 。 幼少期に適切な愛着形成がなされないまま、自己肯定感が極めて低い大人になってしまった──それが私の妻だった 。
そんな彼女は、我が子の子育てで行き詰まっていた 。 「お前は何度言ったらできないのは馬鹿か? こうしろって言ってるだろうが」 かつて自分が厳格な義父からされてきたように、言葉で子どもたちを支配し、命令して言うことを聞かせようとしてしまう。うまく行動できない子どもに、時には手が出てしまうこともあった 。
義母や義姉からその育児をとがめられる妻 。 そして私もまた、「子どもを守りたい」という一心から、正論という名の刃で、妻の心をメッタ刺しに切りつけていたのだ 。
21時のゲーム部屋から聞こえる笑い声
そんな我が家に、コロナ禍をきっかけにゲーム機(Switch)がやってきた 。 そこから妻は変わっていった。オンラインゲームの世界にのめり込んでいき、時にはゲームマスターを務めるほど、彼女はそこでのコミュニティに自分の居場所を見出していった 。
不倫が発覚する前の3年間、妻は家族旅行のとき以外、毎晩のように21時から夜中の2時、3時までずっと画面に向かっていた 。 翌朝、寝不足で家族の前ではいつも不機嫌な表情をしている妻を見て、私は「ゲームなんてやめればいいのに」と冷ややかな視線を送っていた。注意すれば喧嘩になるのが怖くて、何も言えなかった 。
でも、食事や洗濯、食器洗いなど、妻は家事をちゃんとしてくれていたのだ 。それなのに、私は「作ってくれてありがとう」という当たり前の感謝の言葉すら言えずにいた 。
子どもの寝かしつけをする私の耳に、別の部屋から妻の楽しそうな笑い声が響く 。 あの時、「私は妻が、私のそばには既にいなくなっている」ように感じていた 。
正論で責め立てられ、家庭内に居場所がなく、自己肯定感もズタズタだった妻 。 オンラインゲームの中でだけは、自分の存在を認められ、笑うことができた 。そんな日々を繰り返す中で、妻は寂しさを埋めるように不倫を選択したのだと思う 。
これからの軸。揺れる心も、すべて抱きしめて
今、私の隣で、何も知らずにいびきをかいて寝ている妻 。 その姿すら、今の私には愛おしく思えてしまう 。
「今回の不倫は、そんな大切なことを気づかせてくれた」
そう思わなければ、やっていられない。今も妻は浮気相手と恋愛状態で、他の男に気持ちが向いているかもしれない。スマホを触る姿を見れば、胸がザワつく 。
だけど、もしこの不倫がなければ、私は妻が20年間注いでくれた愛情に気づかないまま、不満ばかりを抱えて残りの人生を過ごしていたかもしれない。それもまた、違うのだと思う 。
「妻を変えることはできない。できることは自分を変えることだけ」
妻の気持ちは妻のもので私がコントロールすることはできない。連絡をとっているかどうかを監視し続けたところで、失われた信頼は戻らない。だったら、私は「妻が今どこを向いているか」ではなく、「妻との関係性」に目を向けたい。関係性をもう一度、下から積み上げていきたい 。
ほとんど毎日お弁当を作ってくれたこと、体調が悪い時に優しく抱きしめ返してくれたこと 。あの温もりをもう一度取り戻すために。
もちろん、この決意が明日には揺らぐかもしれない。またフラッシュバックに襲われて、不安や怒りに狂いそうになる夜が来ることも分かっている 。
だけど、私はこの日気づいた「20年間の愛情」を心の軸にして、これからの日々を生きていこうと決めた 。不倫が気にならないくらい、穏やかに 。 もう一度、幸せで、笑顔で、温かい時間を二人で過ごすために 。


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